病院で働く看護師にとって、点滴は最も日常的に行われている看護業務の一つです。患者さんも緊急入院や手術・検査などの処置のときは点滴を入れることが多いので、患者さんにとっても身近な医療だと思います。
看護師が病室に行く前に必ず立ち寄る場所といえば、点滴作業台です。


私が以前働いていた職場では、独立した点滴作業台がナースステーション内にありました。点滴作業台の上には基本的には物を置かないルールになっていましたが、納品された物品や薬剤の段ボール、投与準備された点滴が置いてありました。そのため、準備するスペースが少なく、作業しにくいと感じることがありました。
また点滴を準備しようとすると物品が補充されておらず、「シリンジがない!」「注射針がない!」と、すぐに点滴が準備できないこともありました。
日常的な業務だからこそ、少しでもストレスなく準備したいと思っている看護師は多いと思います。
このコラムでは、点滴作業台を使いやすくする方法をお伝えしていきます。点滴作業台が整理整頓されると、点滴準備にかかる時間が短縮され、患者さんと過ごす時間が増えることにも繋がります。
病棟の環境や点滴室を見直そうと思っている看護師さん、これから開業される医療関係の方はぜひご覧ください。
点滴作業台とは

写真のように点滴作業台が独立してある場合と、壁付けしてある場合など病院によってさまざまな使い方をされています。台の真ん中には引き出しやトレーがあり、注射器や針、輸液セットなど、点滴をミキシングする際に必要な物品が収納されています。
点滴作業台に収納してあるもの

次にどのようなものが収納されているかをみていきます。
点滴作業台の上
- 手指消毒剤
- 手袋
- マスク
- エプロン
- 消毒用アルコールまたは環境クロス
- 単包化されたアルコール綿
- 針捨てBOX
- 点滴用トレイ など
点滴作業台の引き出しの中
- 注射針
- シリンジ
- 輸液セット
- 延長チューブ
- 連結管
- 三方活栓
- テープ類
- ドレッシング剤
- 注射用保護パット(フィルム)
- 翼状針
- 留置針
- 生食ロック
- ヘパリンロック
- 駆血帯
- 生理食塩水
- 予備輸液 など

私が以前働いていた病棟では、これらの物が置かれていました。
病院によって使用している医療資材が違い、病棟の特徴によって使用頻度も違います。また病院内で統一されていないので、他の物品を収納されていることもあるかもしれませんね。
点滴作業台での困り事

では次に点滴作業台における現場での困り事についてみていきましょう。看護師にとってはあるあるだけど、慣れてしまって不便さをあまり感じていないこともあるかもしれません。
点滴準備をする作業スペースが狭い
点滴を準備したいけれど、スペースが少なく作業しにくいという声をよく耳にします。ではなぜ作業スペースが狭くなってしまうのか考えてみてくだい。
点滴をつくるときに作業野を広くとるのは、基本ですね。点滴室や作業台が狭いと、点滴準備に時間がかかったり、ミキシングの際に清潔なものまで汚染してしまうことになります。
スタッフはみな、同じタイミングで点滴準備をすることが多くあります。そのため場所の取り合いになったり、隣の人の肘が当たったりなど、ストレスを感じる方も多いのではないでしょうか。
点滴作業台が病棟内で統一されていない
点滴作業台の購入時期や購入したメーカーが違うと規格が違ってしまいます。
点滴作業台のメーカーや種類が違うと、作業台の高さが揃っておらず作業しにくかったり、作業台同士に隙間ができることで、その隙間に薬剤が落ちてしまい、薬剤の破損や紛失につながります。
物品が補充されていない
いざ点滴を準備をしようとして、あれがない、これがないといった経験をされた方は多いのではないでしょうか。毎日の業務でよく使う物品は補充しないとすぐになくなってしまいます。急いでいるときに補充に手間がかかると、ロスタイムになり、看護師の焦りにつながります。なるべくこのような状況にならないようにしたいですね。
点滴作業台を使いやすく整えよう

点滴作業台が使いにくくなる原因を踏まえた上で、どうすれば使いやすくできるかを考えていきます。まずは作業台の上、次に作業台の収納について見ていきます。
点滴作業台の上
点滴作業台において一番重要なことは「清潔」です。清潔を保つための工夫について見ていきます。
清潔にするための道具はすぐ手にとれる場所に配置する
作業前にすぐに環境整備にとりかかれるよう、環境クロスを手にとりやすい位置に設置しましょう。
点滴を準備するときに必要となる手指消毒剤は、点滴作業台の上に設置するようにし、清潔な状態で点滴作成ができるようにします。
点滴作業台の上には必要最低限のものだけおく
必要以上の物品をおくことで、調剤するスペースが狭くなります。物が多くなると埃もたまりやすくなり不潔にもなりやすいです。
点滴作業台の上には、アルコール綿と手指消毒、アンプルやミキシングで使用した針を捨てるBOXのみを置くように決めます。
手袋は壁面収納を利用したり、点滴収納台の下の段に置くようにするなどして、点滴作業台の近くに置いておけるようにします。置いても良いものは何なのか。スタッフ間で共有することで、不必要な物は置かれなくなり、作業スペースを最大限に広く確保できると思います。
作業スペースが広く確保されると、同時に作業できる看護師の人数も増え、また調剤しにくいと感じていた日々のストレスから解放されますよ。
引き出しは使う頻度の高いものから順に収納
病棟で使う頻度の高い物品は上段に、使う頻度の低い物品は下段に収納しましょう。使用頻度が高いものが上段にあると手にとりやすいため、点滴を準備する際の作業効率があがります。
一方で、予備として置いている輸液や、あまり使わないような物品は下段に収納します。病棟によって物品の使用頻度の高いものや低いものは異なっていると思うので、それぞれの病棟の特性を生かした、働きやすい引き出し収納を作ってくださいね。
仕切りを利用して同じ種類のものを分別する

仕切りを作ることで、物品をカテゴリーごとに分けることができます。分別して見やすくなると、収納トレイをあけてすぐに手にとることができ、作業効率があがります。よく使う物品は大きめにスペースを確保し、あまり使わない物品はスペースを少なめに設定して、補充しておける量を変えて管理しましょう。
空き箱を利用して分別されている病棟もあるかと思います。しかし実際は、埃や雑菌が繁殖し汚染される可能性が考えられるため、分別する容器に関しては、丸洗いできたり、アルコールクロスで拭けるプラスチック製などの素材に変更する方が望ましいです。
引き出しやトレイの正面にラベリング表記する

引き出しの中に何が収納されているのかをラベリングすることで、全ての引き出しを開けて探すという手間が省けます。
また、仕切りで分別した場所にも何をいれておく場所か表記します。そうすることで、空になったスペースに物品を補充する際、何のスペースなのかすぐに分かります。
定数をラベル表記する
上記で述べた、収納トレイ内の仕切りで分別された場所にラベリング表記する際に、定数も表記すると便利です。定数が決められていると、いくつ補充すれば良いのかすぐにわかり、物品の過不足が起こりにくいです。
点滴作業台には必要物品以外を吊り下げない
点滴作業台は清潔区域であるため、点滴で必要なもの以外は吊り下げないようにしましょう。点滴と経腸栄養の準備台を共有されている病院もあるかと思いますが、経腸栄養チューブは別の場所で設置するようにしてください。使用後の点滴は不潔ですので、点滴室や作業台に持ち込むことはないかもしれませんが、少しの間だけ吊り下げることも不潔になってしまうので、速やかに破棄しましょう。
必要量だけ補充しよう
収納トレイを満杯まで補充してしまうと、前からあったものが奥に移動し、いつのまにか有効期限が切れていたということが起こります。補充する際は残っているものを手前に置きなおしてから、新しいものを奥に補充していくようにしましょう。
物品不足も困りますが、入れすぎると物品が取り出しにくくなってしまいます。
まとめ
今回は使いやすい点滴作業台についてお話させていただきました。
看護師にとって毎日欠かせない業務である点滴。点滴作業台の環境が変われば、効率的に準備ができ、気持ちよく朝のスタートを切ることができます。毎日使う場所だからこそ、今一度病棟の点滴作業台の環境を見直して、スタッフが働きやすい環境に整えてみてくださいね。
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