働きやすい医療現場に整える【薬用冷蔵庫】

コラム

病院ではほとんどの患者さんが病気の治療をするために薬剤を飲んでいます。
与薬は私たち看護師にとって日常的な業務である一方で、医療事故が起こりやすい業務でもあります。
薬剤のほとんどは常温で保管されていますが、一部の薬剤は冷蔵庫や金庫といった特別な管理を必要とするものもあります。
みなさんの病棟では冷所保存の薬剤をどのように管理していますか?また冷蔵庫内は整理整頓されていますか?
冷蔵庫内の薬剤が煩雑に収納されていると、取り出しにくく不便であるだけではなく、薬剤を取り間違えるといった医療ミスの危険性も高まります。
このコラムでは、冷蔵庫内を使いやすくし、医療ミスが起こらないように整えるにはどうしたらよいのか考えていきます。

薬用冷蔵庫とは

楽天市場様から画像をお借りしました

薬剤の中には冷所保存の指示があり、冷蔵庫で保管する必要のあるものがあります。
薬の保管方法については、日本薬局法で定められています。

室温1~30度
冷所1~15度
常温15~25度


医療用冷蔵庫は、家庭用の冷蔵庫と違って温度管理の精度が高く、細かく温度設定を行
うことができます。また、冷却装置に霜がつきにくくなっているため、保冷庫内の温度は
一定に保たれるような仕組みになっています
しかしながら、薬は正しく管理されなければ化学変化を起こし、劣化してしまうことが
あります。薬効が低下してしまうと症状が緩和されず、患者さんの治療に差し支えます。
よって看護師は、薬剤を指示された保管方法で、適切に管理する必要があるといえます。

冷所保存での注意点

冷所で薬剤を管理する際には、特に以下のことへの注意が必要です。

  • 温度が高温になると、薬を分解する速度が速くなるため、冷蔵庫の開けっ放しによる温度の上昇には注意する
  • 凍結すると薬が変化し、室温に戻しても元に戻らない場合があるため、冷所保存の際には0度以下での凍結は避ける

薬用冷蔵庫内に収納されている薬剤

実際の病棟で、薬用冷蔵庫管理になっている薬剤をみていきます。

未開封インスリン

新神戸おかだクリニックのHPよりお借りしました

凍結を防止するために冷気が直接あたる場所は避けて保管します。凍結してしまうとインスリンの精度が低下し、注入器が動かなくなる可能性があり、温度管理には十分気を付けなければなりません。また、インスリンに記載されている使用期限は、指示通りに保管した場合での期限となりますので、適正な保管がされていないインスリンは、記載されている期日内に使用しても、薬効が得られにくい可能性があります。
使用開始したインスリン製剤は開封日を記載して、室温で保存します。

座薬

写真ACより

座薬の種類によって、冷所保存と室温保存のものがあるため、保管方法は薬剤によって確認する
必要があります。
例えば、アルピニー座薬やボルタレン座薬は冷所保存ですが、ナウゼリン座薬やレペタン座薬は室温保存です。

ワクチン

写真ACより

コロナワクチン接種が始まったころ、何度か話題に上がっていましたが、ワクチンを保管する際の温度管理は重要です。
ワクチンに関しては「既に一部の接種液が吸引されているバイアルを使用する場合は、最初の吸引日時を確認し、最初の吸引から24時間を経過していた場合は使用せず、適切に廃棄すること」と厚生労働省から通知があります。
そのため、一度開封・吸引したら24時間以内に薬剤を使い切る必要があります。
ワクチンは、有効性や安全性を維持するために温度管理を厳密に行う必要があります。しばらく常温で置いていたワクチンは安全性に欠けるため破棄しなければなりません。

水剤・シロップ剤

写真ACより

カビや雑菌の繁殖を防ぐために冷所保存が基本です。シロップ剤は水が入っており、雑
菌が繁殖しやすいため、期限内に飲み切れず残った薬は破棄しましょう。

内服する際には、キャップで計量しそのまま飲んでしまうと、キャップについた唾液等で雑菌が繁殖しやくすなります。キャップで計量する場合は、計量した後に必ずコップやスポイトに移して飲んでくださいね。

点眼液

写真AC

目薬は凍結すると変質するため、凍らせないように注意が必要です。
目薬の種類によって、冷所保存と室温保存のものがあるため、保管方法を確認する必要があります。例えば、キサラタン点眼液は冷所保存ですが、リザベン点眼液やノフロ点眼薬は冷所保存できず室温保存になります。また、クラビット点眼液のように遮光の必要がある薬剤もあるため、遮光袋に入れて保管する必要があります。

内服薬

内服薬のほとんどは室温保存です。高温・多湿・直射日光を避けて保存します。内服薬にも一部冷所保存の場合があります。

血液製剤

血液製剤は種類によって細かく温度管理が定めされています。血液製剤は、血液製剤専用の保冷庫で保管する必要があり、重症管理部門や、薬局など病院の中でも特別な場所でのみ保管が可能です。

全血製剤・赤血球製剤 

貯蔵は2~6度です。凍結してしまうと、赤血球が壊れて溶血してしまう可能性があります。
また、室温で置いていた場合も細菌が繁殖するために使用できません。

血漿製剤 

日本赤十字社よりお借りしました

貯蔵は-(マイナス)20度以下です。
融解後使用しない場合は、2~6度で保管し、24時間以内に使用します。融解したあとに再度凍結させると製剤の品質が低下するため、再凍結は禁止されています。

血小板製剤 

貯蔵は20~24度で、振とうする必要があります。
この製剤は冷蔵庫での保管は禁止されています。
冷蔵すると血小板の生体寿命が低下し、輸血の効果が低下してしまいます。
また、振とうしないと血小板の凝集能が低下するため、手で振とうを行い、できるだけ早く使用する必要があります。

軟膏

写真AC

多くは室温保存ですが、一部冷所保存薬剤があります。
例えば、ユベラ軟膏やアクトシン軟膏は冷所保存になります。

薬用保冷庫内の困り事

薬の保管場所が複数ある

薬剤がバラバラに保管されていると、使用途中のものを見落としてしまい、新しいもの
を開けてしまう可能性があります。また、色んな場所に保管していると、探すことに時間がかかり、ロスタイムになります。
また薬剤が積み重なり、冷蔵庫の奥の方に収納されていると、見落としの原因になります。

常備薬の数が多い

冷蔵庫内は限られたスペースであるにも関わらず、たくさんの薬剤が目一杯保管されていませんか?
常備薬の在庫が多くなると、使われないままに長期間残ってしまいます。薬剤は有効な効果を発揮するために、使用期限が決められています。在庫が多い場合は使用期限内に使いきれず、薬を廃棄することもあります。
薬剤を使用期限内に使用するためにも、適切な定数管理が必要になります。

不要になった薬剤が残っている

冷蔵庫に保管されている薬剤は忘れやすい傾向にあり、退院された患者さんの薬が冷蔵庫内に残っていたというミスはよく起こります。
また、処方が変更になり、中止になった薬剤が処理されないまま残っていることもよくあります。

薬の保管が煩雑である

患者さんの屯用薬剤の袋が、冷蔵庫内に積み重ねて置かれている場面をしばしば見かけます。
薬の保管場所が明確に決まっていない場合、空いているスペースにどんどん収納されていくということになります。
薬袋は横に倒して保管すると場所を取り、袋が積み重なるように保管されると、いざ使う時に探しにくい不便さがあります。
また、保管場所をいつもと違う場所にすると、思い込みで同じ位置にあった違う薬剤を手に取り誤薬する危険性があります。

薬用保冷庫を働きやすく整えよう

同じ薬剤はまとめて保管する

同じ薬剤はまとめてケースに保管するか、クリップなどでまとめて保管します。そうすることで使用途中の薬剤を把握でき、使用期限の短いものから使用することができます。また、個人で使用する薬剤については、1患者1トレイで保管することで誤薬予防に繋がります。

同じ薬剤をまとめるときは、使用中の薬袋を一番前に持ってくるように保管しましょう。次の人が確認しやすく、間違えにくいように保管できると、信頼関係ができて働きやすくなりますよ。

似ている薬剤の配置を変える

例えばインスリンを例にすると、ノボリンRとノボラピッドは名前や見た目がよく似ています。
似ている薬剤同士を横に並べたりすると、薬剤を取り間違えてしまう原因の一つになります。
見た目や名前が似ている薬剤は離して保管し、それぞれの薬剤名を大きく書いたり、「類似薬剤あり」といった注意を喚起するようなラベルをつけると、薬剤を取り間違えるミスの発生を予防できます。

冷蔵庫内の環境を整え、与薬ミスを防ぐような工夫が重要ですね。
類似薬剤の他、「同姓者あり」や「冷所薬あり」など、全スタッフに注意喚起する必要がある項目をラベルで表記すると、医療ミスを防ぐことができますよ。

使用期限切れは破棄する

薬剤には使用期限があります。使用期限を過ぎたものは速やかに破棄しましょう。また、使用期限内でも保存方法が守られていなければ、薬の成分が変化し薬効が低下している恐れがあります。
長い間常温で薬剤を置いてしまった場合は、薬剤師さんに相談しましょう。

冷蔵庫の開けっ放しに注意する

冷蔵庫の扉を開けたままにしていると、温度が上がってしまいます。薬剤への影響を考え、扉の開閉はなるべくスムーズに行いましょう。
在庫管理や期限が切れていないかを確認する際も、できるだけ冷蔵庫の外から確認しましょう。
常備薬は区切られたボックスに収納し、使用期限側を上向きに置くことで外からみて確認しやすくなります。期限が近くなったものは付箋で期限間近と注意喚起することで、期限の見落としをなくし、薬剤の無駄が減らせます。

薬剤の開封日を記入する

複数回使用する薬剤は、開封した日時を記載し、期限内に使い切れるように管理します。
使用期限がきれた薬剤は、誤って投与してしまう可能性があるため、速やかに破棄しましょう。

常備薬の定数を見直す

常備薬の定数を見直してみましょう。ほとんど使われていない常備薬は、ストックから削除します。在庫が多すぎるものは減らし、頻繁に足りなくなる薬剤は定数を増やしましょう。
定期的に常備薬の定数を見直し、管理することで業務改善に繋がります。

冷蔵庫内の整理整頓を行う

冷蔵庫内が煩雑になると、医療ミスのリスクが高まります。
冷所から取り出した薬剤は、元の場所に戻すことを徹底させましょう。薬剤の定位置をラベリングで表記することで、どの看護師も同じように整理整頓できるようになります。
また、定期的に冷蔵庫内をチェックし、期限が切れたものや退院された患者さんの薬や中止薬などがある場合は破棄しましょう。

屯用薬の袋をまとめる

薬剤袋を寝かして保管すると収納スペースをとります。また、袋が積み重なっている状態では探しにくいため、ファイルスタンドに立てて入れるように収納します。
このように収納すると、薬がかさばらずに冷蔵庫内もすっきりとした印象に変わります。

内服ファイルや患者カルテなどに記載する

冷蔵庫に保存されている薬剤は、内服ボックスで管理されている薬よりも忘れやすい傾向にあります。そのため注意喚起として、「冷蔵庫内に薬剤あり」と患者カルテや内服ファイルなどに赤字で記載を行います。また、退院時のチェックリストにも「冷蔵庫内の薬剤の確認」といった項目を入れることで、退院時に渡し忘れがないようにできます。

お薬は、患者さんがお金で買われているもの(入院費に含まれている)という意識をもって、退院時の返却忘れはなくしていきましょう。

冷蔵庫は薬品のみを収納する

患者さんの飲食物を預かるときには、別の冷蔵庫に保管しましょう。食品と薬剤を一緒に保管してはいけません。

まとめ

今回は働きやすい薬用保冷庫の環境についてお話させていただきました。

薬品保冷庫を働きやすくするポイント
  • 同じ薬剤はまとめて保管する 
  • 似ている薬剤の配置を変える
  • 使用期限が切れた薬剤は破棄する
  • 冷蔵庫の開けっ放しに注意する 
  • 薬剤の開封日を記入する
  • 常備薬の定数を見直す
  • 冷蔵庫内の整理整頓を行う
  • 屯用薬の袋をまとめる
  • 冷蔵庫内に収納されている薬剤を内服ファイルや患者カルテなどに記載する
  • 冷蔵庫は薬品のみを収納する

薬用冷蔵庫を整理整頓することは、薬剤が取り出しやすく業務がスムーズに行えるようになるだけでなく、医療ミスが起こりにくい環境に変えることにもつながります。
患者さんの治療に欠かせない薬剤の管理について、一度環境を見直してみてくださいね。

コメント

  1. […] にも「遮光保存」「冷所保存」といった特別な保管を行う薬剤もあります。冷所保存の薬剤については薬品冷蔵庫のコラムで詳しく記載していますので、そちらも是非参考にご覧下さい。 […]

タイトルとURLをコピーしました